SAS_CNS --固体用NMR用化学シフト帰属プログラム--

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【SAS_CNSとは】

固体NMR用化学シフト帰属プログラム:SAS_CNS (Simulated-Annealing Spectrum fitting with CNS)は、 ペプチド、蛋白質を対象とした固体NMRの実測スペクトルを入力することにより、 自動的に主鎖骨格Cα,Cβ,C'シフトの帰属を行い、最適化されたシミュレーションスペクトルと 三次構造を出力するプログラムです。 このプログラムでは、CNSによる構造最適化法、SHIFTXによる3D構造からの化学シフト値予測、及び当研究室で開発した 交差ピーク強度計算法などを利用し、スペクトルシミュレーションを行ないます。

【序論】

近年、不溶性で結晶も作らない膜蛋白質の三次元構造決定に対して、 固体NMRを用いた分子構造解析法の開発が望まれています。 NMR信号の化学シフトは原子近隣の電子密度分布に左右されるパラメータで、分子の局所立体構造を反映します。 したがって、ある分子の構成原子の化学シフトを全て測定できれば、 その一覧から直接その分子の立体構造を推定することが可能です。 しかしながら、固体NMR信号の線幅が原理的に広いことと、均一標識による信号数増加のせいで各信号が分離観測できず、 シフト値を実測できないという理由から、固体NMRによる全構造解析は困難であります。 そこで我々は、初期分子構造の原子座標と、データベース(蛋白質の原子座標-化学シフト間の対応データベース)から 理論的・統計的に解析・予測されたシフト値一覧、を利用することで量子計算的にNMRスペクトルを生成し、 これを実測スペクトルと定量比較し、擬似ポテンシャルエネルギーとして分子構造計算に組み入れ、 段階的に最終構造に収束させる手法を考えました。

図. SAS-fitting解析のスキーム

この解析はCNSの"extend.inp"によりポリペプチド鎖を伸長することから開始します。 Simulated Annealing MD計算でトータルエネルギー(ETot)を最小化することにより、シミュレーションスペクトルが 実験スペクトルに対してフィットされてゆきます。 ETotには、CNSにおける擬似ポテンシャルエネルギー(ECNS)、とスペクトルフィッティングにおける 擬似ポテンシャルエネルギー(ESp)が含まれています。 ESpとその微分∂ESp /∂r (N) を計算するためのサブルーチンプログラムをCNSに加えました。 スペクトルはペプチドの原子座標 r (N)の関数として計算されます。

【プログラムのダウンロードとインストールについて】

*** 動作環境 ***
本プログラムはUnix/Linuxシステム上で動作します。

*** Requirement ***
1. Fortran/Cコンパイラ(g++やgccなど)
2. makeなど、CNSをビルドするためのコマンド一式
3. データ解析ソフトウェア「Felix」を使用します。

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【本プログラムに対する質問・意見】

Takanori SASAKI (takanori*protein.osaka-u.ac.jp)
Yoh MATSUKI (yoh*protein.osaka-u.ac.jp)
Toshimichi FUJIWARA (tfjwr*protein.osaka-u.ac.jp); Correspondence Author

(Please change * to @.)

【文献】

Spectral Fitting for Signal Assignment and Structural Analysis of Uniformly 13C-Labeled Solid Proteins by Simulated Annealing Based on Chemical Shifts and Spin Dynamics

Yoh Matsuki(1,2), Hideo Akutsu(2), and Toshimichi Fujiwara(2)
1. Institute for Bioinformatics Research and Development, Japan Science and Technology Agency
2. Institute for Protein Research, Osaka University

J. Biomol. NMR, 38, 325 339 (2007).